体重減少をともなう疾患
前回に引き続いて体重減少を伴う疾患について、
みていきましょう。
1、神経性食欲不振症(拒食症)
肥満に対する恐怖心から極度のカロリー制限をしたり、
指でのどを刺激して食べたものを吐いたり、
下剤の乱用などによって20%以上も
体重が減少することがあります。
女性の場合は3カ月以上無月経が続くこともあります。
思春期の女性に多く、やせていくことを喜び、
元気で活動的なのが特徴ですが不整脈を起こして
突然死することもあります。
2、糖尿病
膵臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、
血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。
食事から摂取した糖質をエネルギーとして
利用できなくなり、かわりに脂肪や筋肉中の
たんぱく質が分解されてエネルギー源として
利用されるため、体重が減っていきます。
肥満や老化、遺伝が発症に関係していると
考えられています。
3、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌される疾患です。
代謝が促進されるために、
食欲があってたくさん食べているにも
かかわらずやせていきます。
甲状腺の腫れや眼球の突出、手のふるえ、
動悸などの症状もあらわれます。
自己免疫の異常や遺伝が関係していると考えられ、
多くは20~30代の女性に発症しますが、
男性の発症もめずらしくありません。
4、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍
胃痛や胃もたれ、吐き気、食欲不振などの
症状により食事の量が低下し、体重が減少します。
慢性胃炎は、ストレス、食べすぎ飲みすぎで
起こると考えられ、繰り返されると
胃潰瘍に進行することがあります。
胃潰瘍の場合は食事中から食後にみぞおち周辺が
痛みますが、十二指腸潰瘍では早朝や
空腹時にみぞおち周辺が痛み、食事をとると
治まるのが特徴です。
これらの疾患は、ピロリ菌の感染が
主な原因になります。
5、潰瘍性大腸炎
大腸の粘膜に潰瘍やただれができる炎症性の疾患で、
ここ数年患者数が急増しています。
20代の若い人に多く発症し、
非常に再発しやすいという特徴があります。
主な症状として、
下痢にともなう粘血便があらわれます。
重症になると発熱や腹痛が生じます。
長期間下痢が続くため、体重の減少が
みられることが多くあります。
6、吸収不良症候群
体に必要な栄養素と水を吸収できない障害が
あるために、栄養が不足して体重が減少します。
その他、慢性的な下痢、全身のむくみ、貧血、
口内炎などを引き起こします。
また、脂肪が多く含まれる脂肪便が排出されます。
通常の便は便器の水の中に沈みますが、
脂肪便は浮くのが特徴です。
7、胃がん
発症に塩分の過剰摂取やピロリ菌が関与している
とされる胃がんは、初期にはほとんど症状が
あらわれません。
進行すると、胃痛や胸やけ、嘔吐、吐血などがみられ、
それにともなう食欲不振や体重減少が
起こります。
胃がんにかかる日本人は非常に多く、
男女ともにがんによる死亡原因の第2位となっています。
これには、塩辛い食べ物を好む日本人の
食生活が関係していると考えられています。
8、大腸がん
食物繊維が少なく動物性脂肪の多い食生活と
関連があるとみられている大腸がんは
初期には検査でわかる血便以外、
ほとんど症状があらわれません。
進行すると肉眼でわかる血便が出たり、
さらに腹部にしこりを感じたり、
便が細くなったり、便秘や下痢、腹痛といった
便通異常などの症状があらわれることがあります。
これらの便通障害や食欲不振によって体重が減少します。
9、肺結核
結核菌という細菌に肺が感染して起こります。
せき、たんや肉眼では確認できない
微量の血が混じったたん、微熱などの症状が
2週間以上続くと同時に、食欲不振や倦怠感、
体重減少などが起こる場合があります。
結核菌は、せきなどによって感染が
広がる可能性がありますが、
初期症状が軽いため、感染に気付かないことも
あります。
感染者数は一時減少したものの、
最近では療養施設等でのお年寄りの集団感染や、
新しい結核菌の登場によって再び増加しています。
10、うつ病
特別な疾患がないのに、
だるさや疲れがとれず気力が低下したり、
落ち込んだりして興味や楽しい気持ちを失い、
それを自分の力で回復するのが難しくなる疾患です。
多くの場合、食欲が減退し、食事の量が低下して
体重が減少します。
その他睡眠障害、集中力の低下をはじめ、
体の動きが鈍ったり、逆にイライラして
焦る気持ちが強くなったり、疲れが激しくなるなど、
心と体の双方に症状があらわれます。
11、アジソン病(慢性副腎皮質機能低下症)
結核や自己免疫の異常などにより、
副腎皮質ホルモンの分泌が低下する疾患です。
疲労感、食欲不振、体重減少などがあらわれ、
皮膚に色素沈着が起きて顔や手の甲などが黒くなったり、
口の粘膜に黒いしみができるのが特徴です。
頭痛、めまい、下痢、吐き気や嘔吐
などをもたらすこともあります。
日常生活でできる予防法
1、極端な偏食や無理なダイエットをしない
極端な偏食や無理なダイエットを避け、
たんぱく質、脂質、炭水化物(糖類)、
ビタミン、ミネラルを毎日の食事の中で
バランス良くとりましょう。
カロリーの過剰摂取は生活習慣病の
原因になりますが、不足するとエネルギー不足になり、
抵抗力の低下などさまざまな障害が
引き起こされるので注意が必要です。
2、ストレスを溜めない
休日は仕事のことを忘れる、
悩みごとは早めに人に相談するなど、
ストレスを溜めないようにしましょう。
スポーツや趣味など、自分に合ったストレス解消法を
見つけることも大切です。
また、質の良い眠りは、
ストレスに強い心身をはぐくみます。
40℃以下のぬるめのお湯にゆったりと
つかってリラックスしたり、寝る前に軽い
ストレッチを行うなど、
なるべく深い眠りが得られるように工夫をしましょう。
今回は心が影響する体重減少疾患についてお話ししました。
極端なダイエットではなく、身体に無理のない
ダイエットに心がけましょう!