小脳の働きは・・・
人間の脳の中で最も重要なのは大脳ですが、
小脳も、当然生きていくために重要な役割を持っています。
しかもそれだけではなく、人間の行動にも深いかかわりがあるようなのです。
小脳の位置と構造
小脳は、
脳の後ろ側にぶら下がるような感じで
くっついています。
小脳の構造も大脳のそれと似ていて、
小脳皮質と白質からなります。
小脳はその名が示すとおり
大脳よりも小さいですが、大脳同様表面が
しわしわになっており、その量は大脳よりも多く、
細かいです。
どれくらい細かいかというと、
しわをそれぞれ伸ばして広げたら
小脳の方が大脳の2倍もの大きさになるくらいです。
しかも、脳の神経細胞は約140億個ですが、
それは大脳の神経細胞の数のことを言っているのであって、
小脳の神経細胞は約1000億個あります。
大きさは大脳よりに比べて非常に小さいですが、
中のポテンシャルは大脳をはるかに
凌駕しているのです。
小脳の役割
これだけの大きなポテンシャルを
もっている小脳ですが、大脳と比べると
その役割は地味なものだと思われていました。
昔はある特定の役割しか担っていない
といわれていたくらいです。
しかし、最近では新たな研究成果が
どんどん発表され、それに伴って小脳の働きも
多くのことに関与しているらしいことがわかってきました。
運動機能の調整
昔から言われている小脳の役割です。
普通の人が立ったときに倒れず
にまっすぐ立てるのは、小脳の働きによって
バランスが保たれているからです。
また、指先を使った作業など
細かな作業を行うのも小脳の働きによってです。
かつては、小脳の役割といえば
これだけだと思われていました。
体で覚える
近年の研究により、
いわゆる「体で覚える」というのは
「小脳が記憶する」ということだというのが
わかってきました。
我々が何も考えずにできる行動は
全て小脳が覚えているからこそできるのです。
例えば、「自転車に乗る」という行動は
生まれながらにして人間ができる行為ではありません。
もし人間が生まれつき自転車に乗れる能力を
持っているのなら、自転車に乗れない人が
いるはずありませんよね。
「自転車に乗る」という行動を
小脳が記憶してはじめて自転車に乗れるように
なるわけです。
逆に、一旦自転車に乗ることを覚えてしまえば、
何も考えなくても乗れるようになりますよね。
それは小脳が自転車に乗る方法を記憶したからです。
こういうことが近年判明してきたのです。
こうして考えると、大脳が「有意識」を
担っているのに対し、小脳は「無意識」を
担っているといってもいいのかもしれません。
大脳の思考をコピーして保持する
例えば、同じ事を何度も繰り返し行っていると、
やがて何も考えなくてもできるように
なることってありますね。
同じ漢字を何千回も書いていると、
やがて思い出そうとしなくても書けてしまいます。
それは、本来大脳が記憶しているべきものを、
小脳がコピーして記憶しているからだと考えられています。
こうなると、大脳でじっくり考えて
結論を導き出すような事柄を、
小脳の記憶から結論を導き出したりするようになるのです。
人間がとっさの判断が下せるようになるのも、
このコピー能力があるからだといわれているのです。
脊髄小脳変性症
このように、大きな機能を持っていることが
わかってきた小脳ですから、当然何らかの
問題が起こると通常生活に支障をきたすようになります。
この辺は大脳に 問題が起こったときと同様ですね。
小脳に起こる問題は、脳の一部である以上、
脳梗塞や脳出血など脳の一般的な病気もありますが、
特に最近話題に上がっているのが
脊髄小脳変性症です。
これは、何らかの理由のよって、
小脳やそこにつながる部分の脊髄が壊されてしまう
病気のことです。
この病気になると、体は正常なのに
まっすぐ歩けないとか、箸や鉛筆を
うまく使えなくなるとか、そういう症状がでます。
残念ながら、原 因がはっきりしていないため
根本的な治療法は見つかっていません。
ただし、対症療法のほうは研究が進んでおり、
症状を改善することは可能になっているようです。