海馬と長期記憶との関連性は・・・
記憶するということは、
まず感覚記憶で外部の情報を受け取り、
それは前頭葉に入り、ワーキングメモリーとして
数秒から数分間とどまります。
しかし、よほど興味を引くもの、印象深いものでもないかぎり、
すぐに忘れ去られてしまいます。
そこで記憶を、より長く
脳内に定着させるために必要なのが、反復です。
学んだことを何度も繰り返し、復習する、
これが必要です。
前回エビングハウスの忘却曲線を説明しましたが、
繰り返し反復しないと、記憶として留まりにくいのです。
脳は、強烈な印象があるものを「重要なもの」として、
一気に長期記憶化します。
この「重要か、そうでないか」の判断は、
海馬(かいば)という部分が行なっています。
海馬は脳の奥の方にあり、
進化の過程で初期のころに形成された
大脳辺縁系という古い脳の一部です。
海馬は、すぐそばの扁桃体と関わりあいながら、
記憶づけを行なっています。
扁桃体は本能と感情の元の部分なので、
自分に有利かそうでないか、好きか嫌いかなどを元に、
記憶の重要度を判断しています。
大枠の長期記憶が海馬にとどまる期間は、
およそ1か月です。
そのあいだ、忘れないように反復を繰り返すと、
晴れて「本物の長期記憶」になります。
海馬にあるうちは、いちおう長期記憶ですが、
1か月以内に消える危険のある、
不安定な状態になっています。
この1か月をクリアすれば、海馬の記憶は、
側頭葉の記憶のところをはじめとした
脳の各所に分散して転写され、保管されます。
ということで、最初の1か月は気を抜かずに
復習していくことによって、
長く忘れない記憶にできるのです。
記憶がなかなかできないと悩んでいる方は
この期間が大事ということが言えるでしょう。
忘却曲線を考慮に入れると、
科学的に最も能率的な復習スケジュールは、
まず一週間後に1回目、
次にこの復習から二週間後に2回目、
そして最後に2回目の復習から
一ヶ月後に3回目というように
1回の学習と3回の復習を少しずつ
間隔を広くしながら二ヶ月かけて行うことです。
そうすれば、海馬はその情報を
必要な記憶と判断してくれます。
さて、長期記憶とは、海馬から先の記憶になりますが、
これには2種類があります。
ひとつは宣言的記憶(陳述記憶)であり、
言葉で説明できるような記憶であり、
意味記憶(知識記憶)とエピソード記憶(経験記憶)の
2種類があります。
長期記憶
① 宣言記憶
・エピソード記憶昨日の夕食のメニューなどの自伝的出来事、
水害などの社会的出来事の記憶
・意味記憶 家族の名前や誕生日などの個人的な事実、
言葉の意味などの社会的に共有する知識の記憶
② 手続き記憶自転車の乗り方やダンスの仕方など体で覚えた記憶
では次回この一つ一つをみていきましょう!