こころを左右する扁桃核とは・・・
人間の大脳にある「扁桃核」は
アーモンドの形をした神経核で、脳幹の上、
大脳辺緑系の底辺にあたる部分に左右一つずつあります。
辺緑脳は学習と記憶の大部分に関係していて、
扁桃核がストレスで二倍ほどに腫れると、
中央に傷の穴ができます。
そしてその傷により脳の他の部分の連絡が断たれると、
ものごとの情動的な意味を把握することが
できなくなります。
ものごとの情動的な重さが測れなくなると、
人間関係を把握できなくなります。
これが心の病気の発端である可能性があります。
神経伝達物質の異常で、
扁桃核と大脳辺縁系との情報伝達がそこなわれ、
それが統合性を失う元である可能性があります。
心の病気は人間関係に障害が起きること
と言われてもいますが、これがその素因である
可能性があります。
また扁桃核を失えば、
人生から一切の個人的な意味が消失します。
扁桃核は、愛情だけでなく
すべての情動を握っています。
扁桃核の働きを失った動物は
恐怖や怒りを感じなくなり、競争心や協調性を失い、
群れの中における自分の地位も
わからなくなってしまいます。
情動の鈍化、あるいは消失してしまうのです。
涙は人間だけが見せる感情の印です。
涙が出るのも扁桃核とその近くにある
帯状回の働きによります。
扁桃核がなくなれば、
涙を誰かに慰めてもらう必要もなくなってしまいます。
扁桃体は海馬と側坐核をコントロールするとともに、
視床下部、脳幹を通じて
体をコントロールしています。
扁桃体から「心の情報」の行き先は、
情報の種類によって三方向に分かれます。
もの覚えに関する記憶認識系の情報は
海馬に送られます。
海馬からは、側頭、頭頂、後頭の各連合野に出力されます。
扁桃体と海馬の障害による代表的な症状は、
もの忘れと集中力を欠くことで、
進行すると認知症、アルツハイマー症に発展します。
やる気に関する意志行動系の情報は
側坐核の細胞群に送られます。
側坐核からは、
前頭前野と各運動連合野に出力されます。
扁桃体と側坐核の障害は、
やる気を失い、楽しくない気分を招き、
ひきこもり、不登校などにつながります。
側坐核は大きな特徴ある細胞が
広い範囲に分布しており、
海馬や扁桃体のような明らかな形を持っていない器官ですが、
細胞数が減ると問題が起きます。
愛情や憎しみに関する情動身体系は
視床下部方向へ向かいます。
扁桃体が壊され、障害の影響が
扁桃体支配下の視床下部に及ぶと、
情動障害、激怒や飢え、性欲の異常、
自律神経の失調などの症状が起きてきます。
若い人の自殺や暴発事件はこの経路で起きます。
「EQ-感じる知性」の秘密は、
扁桃核の機能および、
扁桃核と大脳新皮質の相互作用にあるようです。
EQは知能指数であるIQに対して
新しく考え出された、感じる知性、
つまり、共感や理解、あるいは
試練に直面したときの精神的な問題解決の知性であり、
記憶を主体としたIQとはちがい、
人間の応用力や適応力や感情のコントロール力などを表す、
新しい概念です。