脳が引き起こす「こころ」とは(3)
かつては、人間らしさやこころというと、
ヒトで特に発達している大脳皮質、
しかも前頭前野に関心が集中しがちでした。
しかし、近年の研究で、
こころを考えるうえで大脳辺緑系と
大脳基底核が果たす役割に注目が集まっています。
情動身体系の中核をなすのは扁桃ですが、
その破壊がすべての精神病と精神障害の
原因となっていることを考えれば、
情動身体系をこころの重要な構成要素として
導入するのはもっともなことです。
さらに、大脳にあるすべてのホルモンが
体にもあることからも、情動身体系を
こころの構成要素とするのは合理的です。
今まで
体とこころが別のものとされてきた理由は、
大脳皮質連合野がこころを創生する場所
であると考えられてきたからです。
しかし、今や大脳皮質連合野をさらに
制御している部位があることが発見されています。
それが「こころの脳」とも呼ぶべき大脳辺緑系と
大脳基底核です。
その主要神経核は海馬、扁桃、側坐核で、
特に扁桃は感覚系の大脳辺緑系と
運動系の大脳基底核の両系にまたがる神経核です。
このようなことからも、
当、記憶術協会で行っている、記憶術のメソッドも、
五感をきたえて、感覚系の大脳辺緑系と
運動系の大脳基底核の両系に関係する扁桃を
刺激することで記憶を定着するものです。
こころは知(海馬)、情(扁桃)、意(側坐核)の
3つの神経核からなり、扁桃はその中核であり、
感性の座です。
木に例えれば、
この3つの神経核が幹の部分であり、
ほかはそこから伸びた枝葉と考えられる。
つまり、機能的に見ると大脳皮質連合野は
すべてその機能枝であり、また、からだは
大脳皮質連合野同等の比重を持った
もうひとつの機能枝であるということになります。
枝葉は傷んでも幹は残ることができますが、
幹が傷むと枝葉もすべてだめになってしまう、
そんな関係です。
さて、こころに対して、いのちの座である
脳幹もまたブランチ(大枝)です。
脳幹から枝分かれしている大脳皮質の一次の
諸中枢もまた枝(小枝)です。
したがってこころを生む仕組みは
全脳全身に行き渡っているといえます。
しかもこころを生む仕組みの中核は扁桃であり、
直径1.5センチほどの小さな脳でありますが、
何とその形はハート形です。
からだと扁桃との間は脳幹を介して
往復の二重の神経線維によって結ばれています。
からだを鍛えることはこころを
鍛えることにつながります。
また、情動身体系の情報は意志行動系の中心、
側坐核を介して「こころの牽引車」の
前頭前野につながっています。
ここに、情動身体系を付け加えることで、
こころを生む仕組みが完成されます。
これら3つの系、またはブロックは
それぞれ独立に機能しますが、
こころは機能上は扁桃を中心とした
ひとつの有機体として機能しています。
こころの決定は扁桃において行われます。
以上述べてきたように、
こころを生む構築は脳だけでなく、
全身にくまなく広がっているといえます。
こころを生む仕組みは、上から人間の脳、こころの脳、命の脳の
3層の脳と、からだの合計4層によって構成されています。