記憶を長持ちさせるには適度な休憩が必要
私たちは、集中的に学習を行う(集中学習)よりも、
適当な休憩(間隔)を取って
繰り返し学習を行う(分散学習)方が
学習の効果(記憶)がより長く持続することを
経験しています。
心理学ではこの現象を「分散効果」と
呼んでいます。
この原因については、
これまでよく分かっていませんでした。
分散効果は、海馬や大脳が主に関係する
宣言的記憶、
小脳が主に関係する運動学習の記憶、
さらに無脊椎動物の運動学習の記憶にも存在します。
そのため、分散効果が表れる原因は、
神経細胞が営む記憶システムの基本的な
メカニズムにあると考えられます。
この記憶を長持ちさせるために、
適度な休養が必要であることの研究発表がされています。
とても興味深い記事です。
独立行政法人理化学研究所は、
学習の効果を上げるには休憩を取ることが
なぜ重要であるのかを、マウスを使った実験で
解明しました。
一夜漬けなど
短時間の学習(集中学習)によってできた記憶に比べ
適度な休憩を取りながら
繰り返し学習(分散学習)してできた記憶の方が
長続きすることは、よく知られています。
心理学ではこの現象を「分散効果」と呼び、
この効果が現れる原因として、
脳内の短期記憶から長期記憶への
変換のプロセスが想定されています。
このプロセスを明らかにすると、
記憶の仕組みを解く大きな手掛かりになると
考えられてきましたが、分子レベルでの
メカニズムの解明は全く進んでいませんでした。
研究グループは、
マウスの眼球の運動学習に着目し、
集中学習と分散学習の記憶が脳の
どの部位に保持されているのかを
実験で調べました。
その結果、集中学習の記憶は
小脳皮質の神経細胞であるプルキンエ細胞に、
分散学習の記憶はプルキンエ細胞の出力先である
小脳核の神経細胞に、それぞれ保持されていることを
突き止めました。
これは、学習によって短期記憶が形成され、
それが長期記憶として固定化されるときに生じる
「記憶痕跡のシナプス間移動」という現象により、
分散効果が起きることを世界で初めて明らかにした
成果となります。
さらに、小脳核の神経細胞に
長期記憶が形成されるには、休憩中に
小脳皮質で作られるタンパク質が
重要な役割を演じていることを確認しました。
このタンパク質を同定することができると、
記憶が作られる仕組みを解く
大きな手がかりを得ることとなり、
記憶障害の治療に役立つことが期待されます。
何か覚えるときには、休憩しながらするといいようです。