頑張るという心は・・・
今回から心の動きについてみてみたいと思います。
私は記憶術協会を主催しているため、
記憶と脳ということに関連したことを中心に書いていますが、
脳は心と常にリンクしています。
その心の動きを知ることも脳のしくみや
能力を知ることになると思います。
励ますときによく使う言葉は、「頑張って!」ですね。
この「頑張って」という言葉を聞いて、やる気になることもあります。
でも、「頑張って」という言葉を聞いて、重荷になることもあります。
同じことが、うつの方々にも言えるのです。
うつになりやすい性格の中に、
「まじめで几帳面」というものがあります。
まじめで几帳面であるからこそ、
きっちりとしている、という良い面があります。
でも、きっちりやりたいときに、
うまくいかないこともあるものです。
自分で
「一生懸命やっているのに、うまくいかないなぁ」
と悩んでいるときに、相手の人が気を遣って
「頑張ってね」というと、「ありがとう」と返事はするものの、
「一生懸命頑張っているのに、これ以上頑張れない…」と
心の中で思ったりするものです・・・
頑張る、という言葉は、励ましの言葉になるのですが、
相手の気持ちが弱っているときには、
「頑張って」という言葉を使うと、
大きなプレッシャーを与えてしまうことになるのです。
それでは、頑張るという言葉を使わずに、
励ますにはどうすればいいのでしょう?
新潟県中越地震のとき、
新潟県は、「元気だしていこー!新潟」という
スローガンを掲げました。
「被災してつらいけれど、一緒に元気だしていこー」
という意味がこめられていますね。
この「一緒」という感覚が大事なのです。
「一緒」という言葉を使うと、つらさが半分になります。
「頑張って」という言葉は、
相手に対して投げかけるだけですから、つらさを共有する
ことにはなりません。
実は、つらいときに大切なのは、
気持ちを共有することなのですね。
子供が転んでけがをして「痛いよ~!」
とさけんでいるときはお母さんが一緒になって
「痛いね~。痛いの痛いの飛んでいけー!」と
痛いところに触りながら、痛い気持ちを共有することで、
子供が安心します。
「頑張って」という言葉は、
心が元気な人にはうってつけですが、
心が弱っているときには、違う表現を心がけてみましょう。
心が元気な人の場合は、自分が頑張っているのかどうか、
確かめることができます。
「達成感のある疲れ」を感じているかどうかです。
疲れは、
頭を使っているのなら、精神的な疲れを感じますし、
体を使っているのなら、肉体的な疲れを感じます。
よく行動しているから
達成感のある疲れを感じるのであって、これは、
きちんと頑張っている証拠です。
達成感のある疲れを感じているのなら、大丈夫です。
どんどん前に進み続けましょう。
でも、頭や体に疲れがあっても、達成感がないのなら、
要注意です。
「頑張ろう」という気持ちが、
空回りしているのではないでしょうか。
ちょっと見直してみましょう!
「頑張ろう」と繰り返し思うのも、
体力や精神力を消耗するものです。
達成感のない疲れを、感じるだけです。
この不安を打ち消すためには、
病気でやむをえない場合を除き、行動してみてはどうでしょう。
全力で行動して忙しくなれば、
不安を感じる時間すらなくなります。
没我という状態です。
行動した時に、達成感のある疲れを感じることでしょう。
それが「本当に頑張っている」という状態なのでしょう。