症状とその対処法・・・
高次脳記憶障害の中で、前回は記憶障害
についてお話ししました。
今回は以下の障害についてです。
■ 注意障害
前頭葉や頭頂葉の障害で引き起こされる注意障害。
物事に集中して取り組むことができず、
ちょっとしたことで気が散ってしまうため、
本人が集中できる時間に合わせて、
適度な休憩を促すことが必要です。
具体的には、会話や思考がとぎれとぎれになり、
まとまりのない会話になったり、
行動の内容に一貫性がなくなったりします。
与えられた仕事をすぐに放り投げてしまったり、
人の話を聞きながらメモを取れなくなったり、
ぼーっとしている時間が長くなり、
呼びかけてもすぐに反応ができなくなったり、
といった症状が見られます。
「4つの注意の機能」とは・・・
① 続けられる力(注意の持続)
注意がそれずに目的を持った行動を行うこと。
② 見つけられる力(選択性注意)
いろいろな刺激の中から、他の刺激に
振り回されないで1つの刺激を選択できること
③ 同時に見つけられる力(同時処理)
一度に2つ以上のことに対して、同時に注意を向けて行動を行うこと。
④ 変えられる力(注意の転換)
1つの行動から別の行動へ注意が変換できること。
<注意障害への対処法>
そのような場合は、ひとつの作業を
ずっと長くやらせるのではなく、
いろいろな作業を組み合わせて、
興味を持たせ続ける工夫が有効です。
そして、同時に複数の作業を与えるのではなく、
静かな環境で一つ一つ確実に作業をこなせるようにして、
作業が達成したら褒めることが重要です。
■ 遂行機能障害
前頭葉の障害により
引き起こされることが多い遂行障害。
計画性をもって行動したり、
周囲の変化する状況に対応できなくなります。
話したり、書いたり、聞いたり、計算したりするなど、
一つ一つバラバラな作業をさせても
問題がないことが多いのですが、
組み合わせてやらせると要領よくできず、
作業に支障が出ててしまいます。
思いつきだけで行動してしまい失敗したり、
約束の時間を守ることができなくなったり、
いつまでも決断できず段取りが
悪くなったりといった症状が見られます。
<遂行機能障害への対処法>
毎日の行動をパターン化し、
単純な作業から練習させ徐々に
行動内容を高度にしていきます。
日常生活や仕事内容の段取りを
マニュアル化して手順を確認させながら
繰り返し練習することにより
遂行機能は上達してきます。
■ 社会的行動障害
前頭葉と側頭葉の障害によって
引き起こされることが多い社会的行動障害。
頻繁に怒鳴り散らすなど、
暴力的で子どもじみた行動を
起こすことが多いですが、逆に感情を失って
無関心になるケースもあります。
急に泣き出したと思ったら、急に怒り出したりして、
周りを困惑させてしまうこともしばしばあります。
また、欲しいと思ったものを
我慢できなくなることもあり、
お菓子を食べ続けたり、タバコを繰り返し吸い続けたり、
手元のお金がなくなるまで散在してしまったり、
といった症状が見られることもあります。
<社会的行動障害への対処法>
無理に説得したりせず、話題を変えたり、
場所を変えたりすることが効果的です。
欲求を抑えられなくなっている場合、
家族を始めとする周りの人が
チェックリストやメモを利用し、
自己管理をうながすようにしましょう。
いかがでしょうか。
いろいろな面から、この高次脳機能障害がご理解できましたなら、幸いです。