若年性認知症(ビック病)とは・・・
認知症は、
一般的には年配者がなるものだ
との認識が強いですが、最近、年配者でないのに
認知症になってしまう若年性認知症患者が
増加しています。
若年性認知症とは65歳未満の人の認知症
のことをいいますが、若年性痴呆症は
アルツハイマー病ではなく、
大脳の前頭葉と側頭葉が部分的に萎縮するピック病
といわれる人が多いのが特徴です。
しかし、アルツハイマー病が研究され、
徐々に治療法も進んでいるのに対し、
ピック病の方は研究が進んでおらず、
その原因や治療法もほとんどわかっていません。
年配者の認知症は世間で理解されていますが、
若年性認知症はまだ世間の理解を得られておらず、
患者もその家族もどうしていいのか
わからないという状態です。
ピック病もここのところ急速に患者数が
増えているという話もありますし、
今後ピック病の研究も進めてもらいたいものです。
日本では65才以上の20人に一人は
アルツハイマーを発症すると言われるほど、
高齢者に多い病気だが、近年では若年性アルツハイマーとして
10代、20代、30代でもアルツハイマーの症状が
確認された事例がある。
働き盛りの40才台、50才台の
若年性アルツハイマー病が近年増加している。
若年性アルツハイマーの患者数はおよそ、
10万人はいると言われている。
10万人前後とみられる若年認知症患者のうち
約3割がアルツハイマー病と考えられている。
アメリカではアルツハイマー病の発生率が
高いと言われている。
これは食事の影響が原因とも言われている。
■ピック病と記憶障害
ピック病で障害を受けやすい記憶
一口に記憶の障害と言ってもいろいろあります。
普通の人にも起こる記憶障害に、
"し忘れ"があります。
先ほど話したような未来に
何かがあることを思いつく記憶、
これを展望記憶と言いますが、
ピック病で障害されることがあります。
それから、いわゆるど忘れが起こりやすくなる。
テレビを見ていて有名人の名前が
パッと出なくなるとか、ものの名前が
出てこないとかがそうですね。
そういうことがピック病で起こることもあります。
これを、喚語障害、あるいは語想起の障害と言ったりします。
このあたりの記憶は、前頭葉や、海馬ではない
側頭葉の部分の機能を反映しています。
ですから、ピック病の方では
特にこういう記憶が悪化することがあります。
また意味記憶障害が起こることもあります。
意味記憶というのは、記憶の中でも非常に
難しい概念ですが、たとえば富士山は、
日本一高い山ということを私たちは知っていますね。
そういう記憶です。
さらに言えば山とは何か?とか、
ことばの定義そのもののような記憶です。
そういうものがピック病ではやられやすい。
左の側頭葉が関係していて、ピック病の初期に
そこを障害されることがしばしば起こるからです。
アルツハイマー病では、よほど進むまでほとんど障害されません。
ここがピック病とアルツハイマーの違いがあります。
ピック病では起こりにくい記憶障害
これに対して、ピック病では障害を受けにくい記憶もあります。
たとえば、本当に覚えようと思って覚えたこと、
ついさっき言われたこと、昨日食べたもの。
そういう記憶については、ピック病では障害が
認められないことが多いです。
もちろん進行すると、全脳に障害が広がるので、
こういう記憶の障害も出るんですが、
初期にはこういうことが起こりにくい。
アルツハイマーでは頻繁に起こる、これが中核症状です。
このところもピック病とアルツハイマーの違いでしょう。
一方で、昔話というのは、ピック病でも
アルツハイマー病でもなかなか障害されない。
小学校のときのことを尋ねると、
みなさん良く覚えていらっしゃいます。
■ピック病の疫学
発病・性差・家族歴など
発病の年齢は、ごく一般論ですが、
だいたい45歳頃から65歳頃くらいで起こってくる。
男女差に関しては、いくつかの調査がありますが、
今のところはっきり言われていません。
発病率は、アルツハイマー病、
レビー小体型に次いで多いと言われていて、
認知症の中で、数パーセント程度か
それ以下という報告が多いと思います。
家族歴については、実はよく分からない。
報告によってバラバラです。
欧米では20から50パーセントの患者に
家族歴があると報告されていますが、
日本ではこれほど高いとは言われていません。
ただ、特徴的な遺伝子の変化によるピック病、
ある染色体に異常を持っている特殊な
遺伝病としてのピック病もあります。
■ピック病の治療
環境調整が重要
認知症そのものを完治させる方法は
今のところありません。
アルツハイマー病に関しては進行を遅らせる薬がある。
アリセプト(塩酸ドネペジル)が有名ですが、
ピック病については、こういう薬はまだありません。
では治療は何もないかというと、
認知症の周辺症状に対しては、いろんな薬を
使った薬物治療が行われています。
これは本当に難しくて、薬によって逆に
悪くなってしまうこともあります。
譫妄(せんもう)といって、
錯乱のようなことを起こすこともあるし、
薬で鎮静がかかってしまって、
昼間ウトウトしてしまい逆に夜眠れなくなって、
生活リズムを崩して悪くなってしまうこともある。
抗パーキンソン病薬もよく使われますが、
幻覚を起こすという副作用もあるので、
慎重に使わなくてはいけない。
ではピック病、認知症には何をするべきか、
というと、やはり、生活リズム、環境を整えることが重要です。